邦銀に逆風・外債の含み損が拡大 【2月8日(火)】
国内大手銀行5社(【8306】三菱UFJFG、【8316】三井住友FG、【8411】みずほFG、【8308】りそなホールディングス、【8309】三井住友トラスト・ホールディングス)の2021年4~12月の決算は、合計で純利益が前年同期比、51%増の2兆4,422億円と7年ぶりの高水準でした。
M&Aなど法人部門が好調で、株高を受けて個人の運用商品も伸びました。
しかし、米国の金利上昇で外債投資は、含み損が拡大し、国内もコロナ禍の長期化で、融資先のリスク要因が目立ち始めました。
三菱UFJの決算は、純利益が、前年同期比、76%増の1兆703億円と過去最高でした。
三井住友は、同44%増の6,247億円、みずほは、同35%増の4,786億円でした。
けん引したのは、営業部門でした。
法人部門では、M&A助言や不動産関連の融資が伸びました。
株式相場が堅調に推移し、個人向けでは、投資信託の販売が好調でした。
三菱UFJは、2022年3月期の通期目標の1兆500億円を超え、他4行も通期目標の9割前後に達しましたが、業績の上方修正は行いませんでした。
楽観論がしぼんでいるのは、国内外でリスク要因が浮上しているからです。
3メガバンクで、市場部門が収益に占める割合は、前期は、4割超に拡大していましたが、今期は2~3割に縮小しました。
金融緩和の修正やインフレ懸念で、不透明感が増し、債券や株式のトレーディング益が低迷しました。
米連邦準備理事会(FRB)の利上げ前倒しの姿勢を受けて、米長期金利は上昇(債券価格の下落)傾向にあり、3メガバンクの保有する外国債券は、昨年12月末にそろって含み損になりました。
預金の内、貸出に回った割合を示す、預貸率は、米銀が6割なのに対して、邦銀で5割程度です。
各行とも、預金の多くを有価証券運用に回してきましたが、利上げ局面では債券の含み損が拡大するリスクが高まります。
米金利上昇は、海外では利ザヤの改善につながりますが、邦銀にとっては外債の含み損の影響は大きくそれ以上にマイナスの影響があります。
4~12月期は、みずほを除いて、債権の焦げ付きに備える与信関係費用は、前期より減少しました。
2021年の倒産件数は、政府の融資などで、57年ぶりの低水準となり、与信費用の増加が抑えられています。
しかし、変調の兆しが見えます。
みずほは、大口融資先の一部で業績が悪化し、個別貸倒引当金を積み増しました。
全体の与信関係費用は、前年同期比、約500億円増加の1,479億円を計上しました。
オミクロン型の流行もあり、飲食や旅行などの業種でコロナの打撃が蓄積していて、与信費用が今後膨らむ可能性があります。
マイナス金利が定着して6年、銀行は従来のビジネスモデルで稼ぎにくくなっています。
三井住友が昨年アジアの個人向け金融に出資するなど、成長市場での収益強化に乗り出しています。
デジタル戦略や環境シフトなどコロナ後を見据えた展開力も試されます。
米利上げが迫る中、邦銀に残された時間には限りがあります。
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