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欧米がん新薬・なかなか日本に上陸しません 【4月1日(金)】

欧米で開発された、抗がん剤などの新薬が、なかなか日本に入ってきません。


薬価の下げ圧力が強まる日本市場は、後回しにされるからです。


ドラッグラグ(新薬承認の遅延)は、日本の医療を地盤沈下させかねません。


胃や腸の希少がん患者に投与される「リプレチニブ」は、海外では、生存期間が大きく伸びるという、臨床試験(治験)の報告があります。


「リプレチニブ」は、創薬スタートアップの米国デシフェラ・ファーマシューティカルズが手がけますが、2003年創業で、日本には拠点がなく、新薬承認に向けた治験もしていません。


「リプレチニブ」を取り寄せた場合、公的医療保険は適用されず、患者負担が1ヶ月500万円に上るそうです。


2010年以降に売り出された、欧米の抗がん剤の内、2020年末時点で、52品目が日本では承認されていません。


「リプレチニブ」など14品目は、治験情報もありません。


新薬の開発元は、欧米のスタートアップが半数以上で、資金力が十分ではありません。


ドラッグラグどころか、いつまでたっても、日本に入らない可能性もあります。


このままでは、希少がんだけではなく、がん全般でドラッグラグが深刻になります。


日本を後回しにするのは、がん創薬のスタートアップだけではありません。


2020年までの5年間で、欧米の新薬の72%が、日本では未承認で、この割合は、2016年の56%を底に、明らかに上昇しています。


日本には、薬価を決定するルールの一つに「市場拡大再算定」があります。


予想以上に売れ、利益が膨らんだ大型薬の薬価を下げる仕組みです。


2016年から、日本での年間売上が1,500億円超などの条件を満たすと、薬価が最大50%下げられる特例が追加されました。


2015年発売の米国ギリアド・サイエンシスのC型肝炎薬「ソバルディ」は、薬価が約3割下がりました。


肝がんを減らす、革新的な飲み薬であることで、需要が膨らみましたが、薬価制度上は、むしろマイナスに働きました。


猫の目のように変わる薬価ルールの変更は、製薬ビジネスの日本離れを招いています。


価値のある薬ほど、薬価が下がるのは大問題で、このままだと日本人が新しい薬にアクセスできなくなります。


厚生労働省は、必要な薬価の引き下げとイノベーションの評価をバランスを取りながらやっていくことに尽きると改革に腰が重いようです。


革新的な高額薬が、国民皆保険を脅かす「オプジーボ亡国論」が意識されるからです。


小野薬品工業の大型がん免疫薬「オプジーボ」が肺がん治療で保険適用された、2015年当時、そのままの薬価では、薬剤費の負担が、1兆7,500億円になるとの試算が話題となりました。


一つの薬で、日本の薬剤費全体の2割近くになります。


こうした薬が相次げば、保険財政が立ち行かなくなります。


厚労省も、革新的な新薬の価格をできるだけ維持する代わりに、特許切れ薬(ジェネリック)の薬価を抑える方向性は示しています。


ところが、「革新的な医薬品のイノベーション評価」「薬価の予見性の確保」などをうたった、2020年度薬価改定も、具体策を見ると製薬ビジネスが日本市場に回帰するようなインパクトはありません。


バイオ創薬の時代を迎え、新薬の成功確率は、2万3,000分の一に下がりました。


数百億円~数千億円もの開発費用が出せるのは、一握りのメーカーだけで、大多数の中堅メーカーは、特許切れ薬で稼ぐしかなくなりました。


いきなりかじを切ると中堅製薬会社の経営が成り立たず、大きな混乱を招きます。


官民の利害調整は出口を見つけられず、ドラックラグがさらに広がる兆しがあります。

 


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