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転勤制度・転換期に 【6月16日(木)】

社員に希望しない転勤を求める、雇用慣行の見直しが、進んでいません。


共働きが増え、介護など、事情を抱える社員もいて、転勤が、時代にそぐわなくなりつつあります。


実際に転勤する人は、毎年60~70万人と見られ、横ばいが続いています。


日本の労働力人口(約6,900万人)の1%が、会社の指示で、勤務地を変えていることになります。


アート引っ越しセンターによると、コロナ禍で落ち込んだ、転勤に伴う引っ越しが、コロナ前に戻りつつあります。


2019年の調査では、6割超が、転勤が退職のきっかけとなると回答しています。


転勤拒否の理由には、配偶者も仕事している、子育てがしづらい、親の世話・介護が必要などが、多くを占めています。


それでも多くの企業は、転勤制度を続けています。


表向きは、強い人事権が、会社の柔軟性を高める面もあるとの理由からです。


転勤は、終身雇用制度と表裏一体でもあります。


会社都合で、転勤命令を受ける反面、安定した雇用が約束されてきました。


こうした関係を象徴するのが、1986年の東亜ペイント訴訟の最高裁判決です。


転勤命令に従わず、解雇された元社員の男性に対し、最高裁は、単身赴任などの家庭への影響を、通常甘受すべき程度のものと、結論づけました。


判決から間もない1990年頃から、変化の兆しが見られ始め、家族帯同ではなく、単身赴任が増えてきました。


夫の転勤についていくのが当たり前という意識が、変わり始めました。


1990年代は、共働き世帯が、専業主婦世帯を上回った時期に当たります。


2021年には、共働き世帯が、1,250万世帯と、専業主婦世帯の2倍以上になっています。


家族帯同はおろか、単身赴任も難しい人が増えています。


転勤制度は、転換期にあり、企業にとってはは悩ましい問題です。


政府も2002年に、改正育児・介護休業法で、転勤について、育児や介護に配慮しなければならないと定めました。


労働契約の際、勤務地の変更範囲を明示するよう義務付ける、労働基準法改正の議論も進んでいます。


企業は勤務地を、都内とか、会社の定める場所とか、事前に示す必要が生じる見通しです。


慣行を見直す企業も出てきました。


【9432】NTTは、2021年に転勤や単身赴任の有無も含め、働き方を見直す方針を示しました。


現在転居を伴う異動は、年8,000件ほどあります。


転勤を全廃するわけではありませんが、地方に住みながら、東京の部署に所属するといった働き方を選択できるようにします。


【6702】富士通も転勤を見直し、単身赴任者は、2020年7月の約4,000人から、2022年5月には約2,500人に減少しました。


コロナ禍でリモートワークが浸透し、働く場所の制約が小さくなったことが、転勤縮小を後押ししました。


しかし、こうした企業はまだ少数派で、2021年1~3月の調査では、転勤発令の増減を変更する予定のない企業が、8割超を占めています。


人事権を手放せば、配置転換による人員整理ができなくなるというのが企業の本音で、転勤には、人材育成や組織活性化などの効用があるとの擁護論もありますが、転勤が無くても人材育成は出来ます。


夫の転勤で、仕事を辞める女性は、少なくありません。


今後は、妻の転勤に、夫が同行するといったケースも増えてくると思われます。


一方的な辞令は、配偶者のキャリアを分断しかねません。


人手不足社会を迎えた日本では、旧来の転勤制度を続けていては、人材確保上のリスクが大きくなると思われます。

 


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