ニホンウナギは、絶滅危惧種に指定されるなど、資源の保護が課題となっています。
国内の川や湖でとれる天然のニホンウナギの漁獲量は、1961年の3,387トンをピークに、2023年は55トンと60分の1にまで減少しています。
養殖のウナギの生産量は、1989年の3万9,704トンをピークに、去年は1万8,294トンと半分以下に減っています。
ニホンウナギは、産卵の際には日本の川を離れ、日本からおよそ2,000キロ離れたマリアナ諸島の近くの海で産卵します。
卵からふ化したあと海流に運ばれながら「シラスウナギ」と呼ばれる稚魚になり、日本の川までたどり着いて成長し、再び海に戻って産卵します。
こうしたニホンウナギの生態は長年、詳しく分かっておらず、人工的に卵からウナギを育てる試みもうまくいきませんでした。
国内でウナギの完全養殖に向けた研究が始まったのは1960年代で、1973年に北海道大学のチームが、世界で初めて卵を人工ふ化させることに成功しました。
7月4日、水産庁の研究機関である水産研究・教育機構のグループが、ニホンウナギの稚魚を人工的に大量生産する技術を構築したと発表しました。
人口稚魚の生産コストは、2016年時点では、1匹40,000円以上していたのに対し、今回、生産効率を高めることで、1,800円まで下がったとのことです。
成熟させた母ウナギから、毎週200万粒の受精卵を安定的に採取することに成功しました。
水槽で幼生のウナギ(レプトセファルス)をふ化させ、「シラスウナギ」と呼ばれる稚魚の大きさまで成長させます。
遺伝的に早く成長する稚魚を選び、鶏卵や脱脂粉乳など、安価で身近なエサで育てることにも成功しました。
専用の給餌装置や量産用の水槽も開発し、安定生産と効率化を進め、コストを下げました。
日本で食べられているウナギの多くは、天然の稚魚を採取して、養殖場で育てたものです。
現在、天然の稚魚は、1匹500~600円ほどで取引されます。
水産研究・教育機構では、人口稚魚で一匹1,000円を切ることが目標だと話しています。
この技術を関心のある自治体や企業に提供し、制度面も含めて環境を整えます。
ウナギは生態に謎が多く、人工稚魚の大量生産は、養殖業会でも最難関と位置づけられていましたが、今回、水産研究・教育機構がウナギの稚魚の人口量産に成功したことで、商業化に向けた道筋が見えてきたと期待されます。