多子世帯は大学無償化・所得制限なし【12月18日(月)】
政府は、2025年度から、3人以上の子どもがいる世帯について大学授業料などを無償化する方針です。
所得制限は、設けません。
出産をためらう原因とされる、高等教育費の負担を和らげるためです。
月内に決定する少子化対策の「こども未来戦略」に盛り込みます。
大学や短大、高専などの学生が対象となります。
6月に決定した「こども未来戦略方針」で、2024年度から返済不要の給付型奨学金と授業料減免の対象を、多子世帯や理工農系の中間層に拡大することを決定しています。
両親と子2人の世帯の場合で、年収380万円未満に限っていた要件を、600万円未満に引き上げます。
結婚期間が15~19年の夫婦の出生子ども数を1987年と2015年で比較すると、3人は25.9%から17.9%に低下しました。
0人と1人の割合は12.3%から24.8%に増え、2人は横ばいでした。
経済的な理由で2人目、3人目の子どもを持つことをためらう夫婦もいます。
子どもにかかる高等教育費は、家計の負担になっています。
経済協力開発機構(OECD)によると、日本の家計負担に対する高等教育費の負担割合は、52%で、加盟国平均の22%の2倍以上です。
家計負担の割合は、35ヶ国のうちコロンビア(68%)、チリ(57%)などに続き4番目に高いというのが現状です。
高校生の大学進学希望率は、子どもが多い世帯ほど低い傾向にあります。
文科省の調査では、子ども3人の世帯の大学進学希望率は71%で、2人の世帯より9ポイント近く低くなっています。
4人以上では62%と、さらに顕著になります。
制度設計には、課題もあります。
文科省の調査によると、入学金や授業料など4年間の学費は、国立の240万円に対し、私立文系で400万円以上、私立理系では550万円以上となります。
医学部はさらに高額になります。
大学経営は、少子化の影響を受けます。
文科省の推計では、2022年に63万人だった大学入学者数は、2040年以降は49~51万人に減少します。
入学定員が現状のままなら8割しか埋まらず、大学の淘汰は必至です。
入学者数が減るなか、無償化で学生が獲得できればありがたいとの声もありますが、無償化の制度設計によっては、少子化対策や、教育機会の確保といった本来の狙いとは別に、大学への経営支援の意味合いが、強くなりかねません。