再保険料が高騰・家計の保険料負担増加【12月30日(金)】
再保険料が高騰する見通しです。
再保険とは、地震など大規模な災害やテロなど巨額な保険料が見込まれる保険について、保険会社が、別の保険会社にリスクの一部を引き受けてもらう取引のことです。
保険に保険をかけるので、再保険と呼ばれます。
自然災害関連の再保険料は、米国で毎年1月に、日本で4月に更改します。
米国の自然災害関連の2023年の再保険料は、2022年(10~15%増)より大きくなる可能性が高く、29%上昇すれば、直近ピークの2007年に並びます。
急騰が想定される理由は主に3つあります。
まず、自然災害の大規模化です。
2022年も大型ハリケーンが米国に上陸し、甚大な被害が出ました。
保険損害は、最大10兆円と、過去2番目の規模になります。
世界的なインフレも、再保険料の上昇につながります。
建築資材や人件費の上昇で、建物の修繕費用などがかさみ、復旧費用に対して、保険金が不足しかねず、インフレによる補償リスクの拡大が、再保険料の上昇要因となります。
最も注目される3番目要因は、各国の金融引き締めです。
米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が、大幅な利上げを断続的に行い、日銀も緩和縮小を決めました。
再保険市場には、再保険会社に加え、ファンドや年金などの機関投資家が参加しています。
機関投資家は、国債や社債の利回りが上昇していることで、再保険投資から、債券投資にシフトし始めています。
世界の再保険市場は、2022年9月時点で、前年末比17%減の5,600億ドル(約75兆円)となり、2013年以来、9年ぶりの低水準となっています。
リスクの引き受け手が減れば、その分再保険料が高くなります。
これまでは、災害が増えても、再保険料の伸びは抑えられていました。
2018年には、前年に米国でハリケーンが相次ぎ、大きな損害が出たため、再保険料の5割以上の上昇を見込んでいましたが、結果は、ほぼ据え置きでした。
リーマンショック後の金融緩和で、2010年ごろから、ファンドや年金マネーが流入し、再保険料が、上昇しにくい構図が生まれていました。
保険リスクを証券化したキャットボンド(大災害債)は、金融市場と関連性が低いため、機関投資家などの、株式や債券以外の分散投資先となっていました。
キャットボンド(CAT(Catastrophe=カタストロフィの略)ボンド)とは、同程度の格付けの会社が発行する普通社債よりも高い金利が支払われます。
しかし、その代わりに、災害(台風、洪水、地震など)が発生した場合には、投資家の償還元本が減少する仕組みの債券です。
だが、2022年に再保険料の上昇を抑えてきた構図が一変しました。
大規模災害の多発で、再保険のリスクが高まり、キャットボンド(大災害債)などを買う投資家が減りました。
各国の利上げで、国債や社債の投資妙味が高まり、保険商品に比べリスクの低い、債券にシフトしました。
国内の損保会社も事業環境は厳しく、大手4社(東京海上日動火災保険、損保ジャパン、三井住友海上火災、あいおいニッセイ同和損保)の火災保険事業は、2021年まで、12年連続の赤字です。
2015年から2022年にかけて、保険料を計3割上げ、黒字化を目指してきました。
日本の自然災害関連の再保険料は、2023年4月に更改されます。
再保険会社は、全世界のリスクを引き受けながら、各国の損保会社と交渉していて、米国の自然災害関連の更改が、先行指標になります。
再保険料の上昇は、保険事業の収支が悪化する要因となります。
家計や企業の保険料負担が、一段と増える見込みです。