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販売価格への転嫁が遅れています【2月10日(金)】

コスト増の価格転嫁が遅れています。


欧米では、コスト増の大半を販売価格に反映しているのに対し、日本は、5割しか転嫁できていません。


人件費や原材料費の上昇が、どれだけ消費者物価へ転嫁されたかをみると、日本は、2022年10~12月期は48%でした。


秋までは3割程度でしたが、食品の値上げなどで上昇しました。


米国の転嫁率は、10~12月期134%、ユーロ圏も87%でした。


米国は、過去の未転嫁分まで転嫁している可能性があります。


価格転嫁の遅れのしわ寄せは、中小企業に集中します。


12月の日銀短観によると、仕入れ価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」と答えた割合を引いた、仕入れ価格判断指数(DI)は、大企業のプラス60に対し、中小企業はプラス67でした。


中小企業の方が、原材料コストの上昇をより強く感じています。


一方、販売価格のDIは、大企業は35、中小企業が31でした。


中小企業ほど、仕入れ値が上がっていても、売値の引き上げが難しいと考えています。


2022年春闘の賃上げ率は、全体で2.07%でしたが、中小企業は1.96%にとどまっています。


交渉力の弱い中小企業は、大企業から厳しいコスト要求を突き付けられやすく、人件費カットにつながる場合があります。


ファーストリテイリングやイオンなど大企業中心に賃上げの表明が相次いでいますが、従業員総数の68.8%を占める、中小企業に賃上げの動きが波及しなければ、構造的な賃上げとは言えません。


1月の施政方針演説で岸田首相は、「下請け取引の適正化、価格転嫁の促進」の取り組みを強化すると表明しました。


賃上げの原資を確保できる環境づくりが必要との問題意識が、背景にあります。


経産省は、2月7日価格転嫁・交渉に後ろ向きな企業の実名を公表しました。


価格交渉では不二越が、価格転嫁では日本郵便が最低評価となりました。


価格転嫁と価格交渉ともに下から2番目の評価だった企業も、佐川急便や関西電力三井住友建設五洋建設凸版印刷オカムラなど16社ありました。


佐川急便は昨年12月、公正取引委員会からも、価格転嫁の協議をしなかったとして、社名公表されています。


4月から、宅配便の値上げに踏み切ります。


日本は、物価も賃金も上がらない、構造的なデフレが続きました。


消費者が、安くて質の高いモノやサービスを享受できた半面、企業が、人件費を切り詰めるなどして、コスト削減に走り、取引先に価格転嫁を求めにくい商慣習が根づきました。


適正な価格転嫁による物価上昇は、むしろ、中長期には、家計にとって恩恵が大きくなります。


企業が賃上げの原資を確保できれば、働く人の所得が増え、活発になった消費が企業の収益を押し上げる好循環ができます。

 

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